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【vol.20】写真は経験の扉のカギ!?

2019.07.30

令和元年は雨がよく降ります。

水害は家を押し流してしまいますが、流された家をモチーフに家族を描いたのが、山田太一の「岸辺のアルバム」でした。1974年9月1日に発生した多摩川水害を舞台とした作品で、1977年に放映されたTBSのTVドラマは、歴史に残る名作と言われました。

 

 

そのエンディングにおいて、今にも濁流に流されそうな家から家族が持ち出したのは預金通帳でも印鑑でもなく、5冊のアルバムだったのです。今回のテーマは想い出(記憶)が幸せに及ぼす影響です。

 

 

 

◇ 記憶を好む人間

 「インスタ映え」が流行語大賞になったように、老若男女を問わず、写真を中心としたSNSを見ない日はありません。その場で現物を楽しむ前に、なぜ私たちは写真を撮ろうとするのでしょうか?むしろ、写真を撮ってしまえば、現物を楽しむこともなく、次のインスタ映えするモノを探し出す始末です。写真はなくならない記憶ですが、どうやら、現在のそのものより、後で現在を想い出す記憶の方がよほど大切なものであるようです。

 

◇ 記憶の残らない旅行プラン

夢の中で、ハワイ旅行の相談に旅行代理店に行ったところ、プランAとBを提案されました。通常の旅行プランAに対してプランBは旅行代金は格安なのですが、旅行中に撮影した写真とか、記念品、お土産は空港で全部没収された上に、旅行中の記憶を消去する薬を飲むことが条件だと言われます。あなたは、いくらだったらプランBを選択しますか?

では、こちらはどうでしょう。

非常に楽しく幸せ(幸福度10点満点)だが、記憶の残らない人生プランAと、そこそこの幸せ(幸福度6点)だが、記憶が残る人生プランBがあるとしたら、どちらを選択しますか?

 

おそらく、ほとんどの人は価格が高かろうが、記憶の残る旅行であり、多少幸福度が下がろうが、記憶の残る人生を選択します。「インスタ映え」する写真を撮り続けるのは今の経験よりも記憶を重視しているのです。「忘れられない経験」という言葉がこの価値観をストレートに表現しています。経験自体ではなく、「忘れられない」点(記憶)を重視しているのです。

 

◇ 経験と記憶の差

ここで問題となるのは、経験と記憶の差です。

上記のように、経験したとしても記憶として残らなければ意味がないと人は感じているようです。もちろん、経験したことが全部記憶に残るわけではありません。

経験とは実際に経過する時間において認識した情報の総量ですが、記憶は経験した中で認識した代表的な情報の総量なのです。

 

この経験と記憶の違いを幸せの視点で置き換えると、人生の幸せの総量は、全人生に「経験」された幸せの総量ではなく、人生において「記憶」された代表的な時間の幸せの総量であるということになります。

それは映画やTVドラマを見ればわかります。面白い「記憶」となるべき代表的な瞬間を紡ぐからストーリーになるのであって、主人公の「経験」をすべて見せられたら、退屈で見ていられないでしょう。

 

◇ 想い出せない経験

経験と記憶に差が生じる理由は、そもそも認識は変化に対して生じるものだからです。変化の乏しいルーティンが繰り返される事象は馴化してしまい、経験しても記憶には残りません。一方、非日常的な出来事とそれに条件付けされた経験は記憶として残りやすいのです。

 

例えば、東日本大震災3.11の日にあなたはどこで何をしていたでしょうか?ほとんどの人がかなり正確に3月11日の自身の一日の行動を説明することができます。しかし、前日の3月10日や、翌日の3月12日は?と聞かれて答えられる人はほとんどいません。

 

では、3月10日や12日のように、経験(生きている)しているにもかかわらず、記憶に残らない忘れられた日々(人生)は本人にとって、いったいどのような意味があるのでしょうか?

 

◇ 経験の扉を開けるカギである写真

想い出せなければ、その経験の現在価値は限りなくゼロでしょう。しかし、その3月10日や12日に撮った写真があったとすればどうでしょうか?間違いなく、その日の出来事を想い出すでしょう。写真は閉じている記憶の扉を開ける強力なカギなのです。

 

写真を撮るのは楽しく、幸せな時です。誕生、家族の団らん、進学、旅行、デート、結婚、新居などであって、死亡、退学、離婚などの時に撮影する人は多くはないでしょう。

 

「岸辺のアルバム」で崩壊しそうな家族が崩壊しようとする家から持ち出したのは、成長した子どもたちの幼い頃の写真が詰まったアルバム5冊でした。アルバムの写真は、想い出すことがなかった経験の扉を開けることができる唯一の鍵だったのです。カギがなければ当時の経験は永久に失われてしまうのです。家庭と家が崩壊するという間際に過去の幸せを引き出すカギの存在に気がついたのは皮肉なことでしょうか。

 

「岸辺のアルバム」の一家だけではなく、アルバムを押し入れの奥にしまい込んでいる家庭は少なくありません。そこには想い出されることのない幸せな経験が埃を被っているのです。忘れていた幸せな経験を想い出すのは遺品整理の時でしょうか。

もし、そうであったとしたら、カギである写真を使って、忘れていた経験の扉を開けてみてはいかがでしょう。

おそらく、「私は今、とても幸せだ。」となります。

 

一般社団法人 日本ハッピーエンディング協会はアルバムの写真をデジタル化するサービスを提供しています。

 

<Happy Ending カードNO.A-3 幸せの確認> 

想い出すことができれば幸せ!